喜び

頑張り屋

良い傷が付いた話

  邦画だと俳優目当てで映画を見るのをまだ結構やってて、私はそういうのがあるとあんまりフラットな見方ができる人間ではないので良くないよなと思っている。が、俳優目当てで行ったのにシンプルに「面白かった」だけでなくてそこから何日か引きずっちゃったり時々思い出してはもやもやするような映画を見れた時はすごい嬉しい。もちろん面白かったっていうのもすごいことで、いくら俳優目当てで行ったとてハマらなかった映画もあるから。

 

  今までだと『青い春』がそうだったんですけど、もうそういう気持ちでは見られないんだろうなと思っている。見たかったけど。そういう気持ちでは見られないというかそもそも青い春自体が見られないかも。心が痛くなってしまう。松田龍平目当てで見たのが最初。あれを見た時は17とか18の普通なら進路とかの話をしてるときで、それも相まって学校という空間の閉塞感とか、そのくらいの年で見られる世界の全てである学校で完結される感じがすごく好きだったし、九條と青木の何にも変えられないような関係性が本当に好きだった。学校に対しての閉塞感は私は未だにあってめちゃくちゃ引け目。九條と青木に限らずどの登場人物にもそれぞれの話があって、世界があって。何回も何回も見返したくなったしやっぱり何回も見返した。重ねて言うがきっともう私は見られないかもしれないけど。

 

  そういう映画に最近また出会えて、『佐々木、イン、マイマイン』がその存在になっている。初めは藤原季節が見たくて行ったんだけど見終わってからは佐々木のことを思い出しては心がひりついたり気持ちが沈んだりしていた。あまりにも強くこびりつくから早く離れてくれとも思ったけど、そうなったらなったで何かがなくなりそうだから本当に離れてしまうのは悔しいという気持ちにもなった。劇中で見られる悠二たちの中だけには留まらず、見ただけの私の中にも大きな存在として残った。

 

  2時間くらいで人を感情をめちゃくちゃに動かすことができるのが映画の好きなところで、挙げた2つが特に私の中でそれを担っていた、担っているからこれからいろんな場面で拠り所になるんだろうと思っている。良い傷の付き方が出来て嬉しい。